「悲しみの数を 言い尽くすより 同じくちびるでそっと歌おう」
わたしが大好きな歌「いつも何度でも」(by 木村弓さん)の一節です。
はーい、あっちだよ♪
四月のとある日のこと。
仕事が終わって、悲しい気持ちで職場の幼稚園を出たわたし。
玄関を出て肌寒い夕方の雨の中を歩き始めた時……
スタジオジブリ作品「千と千尋の神隠し」の歌のこのフレーズが、ふと頭に浮かんできたの。
「呼んでいる 胸の ど~こか奥で……」
悲しみを胸に抱きながら、そっと口ずさんでみた。
「繰り返すあやまちの そのたび 人は
ただ青い 空の青さを知る」
「こなごなに砕かれた 鏡の上にも 新しい景色が映される……」
静かに……まるで波が引くように……胸の悲しみが少しずつ、少しずつ、とけていくのを感じる……
明神様に続く急な階段を上り、ジェンダークリニックに向かう。
足元には雨の雫と水溜り。
そして、赤いスニーカーと膝上のフレアスカート。
「ああ……わたし……女の子なんだ……」
今日は10日に一度のホルモン注射の日。性別違和を緩和してくれるこのホルモン注射のことを、わたしは、「Happyホルモン♪」と呼んでいる。
₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡
イヤホンを耳にさし、今度はスマホから流れてくる「いつも何度でも」を一緒に口ずさんでみた。
「悲しみの数を 言いつくすより 同じくちびるで そっと歌おう」
じわじわ……じわじわ……
胸の奥から……静か~な幸せなが……しみじみと込み上げてくるのを感じる。
「海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに 見つけられたから♪」
悲しい時は そっと歌おう。 あっちでした♪