「トランスジェンダー虹色の履歴書 vol.5 〜思春期〜」に愛と光と希望を注入して「リプライズ」しました(^_-)-☆
【はじめに】
身体の性別と心の性別♀♂
みんなはどうして、一致してるの?
どうして、疑問に思わないの?
わたしにはそれが、不思議でたまらなかった。
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思春期って、身体も心も子どもから大人に移り変わっていく、難しい時期だよね?
トランスジェンダー的には、この時期に性別違和に本格的に気づく人が多いらしいの。
子どもの頃は意識しなかった性♀♂を、強く意識し始める時期だもんね。
あっちもその一人だったよ。
思春期ってさ、恋とか青春とかあるけどさ、心がズキズキと痛むこともたくさんあるよね?
みんなの思春期はどうだった?
でも、心が痛くたって大丈夫! 必ず乗り越えて、成長できるから。
わたしと一緒に……ね♪
トランスジェンダー虹色の履歴書vol.五 ~思春期リプライズ~
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【心を殺してすたーてぃん】
小学生から中学生へ……
わたしにとってのそれは、とある重大事件から始まったの。
抗おうとする気持ちすら、切り刻まれて……
闇の中で……人知れずに……ね……
【さまよう一人称】
子どもの頃からずっと「僕」や「オレ」という男の子向けの一人称が言えなかったわたし。
この頃は、自分をなんて呼んでいたかな?
あんまり覚えてないの。
どれもしっくりこなくて、色々試していたからね……
「I、YOU、WE」って、英語で習った。
それでわたし、高学年くらいから、一人称を「i(アイ)さん」と言っていたのは覚えてる。
【男子♂みたいになりたくない!】
周りの男子たちが、第二次性徴や反抗期を迎えていく。
……嫌だ……こんな話……
「i(アイ)さんは、あんな男子♂みたいにはなりたくない!」
毛が生えるとか、精子とか、気持ち悪くないの?
そんなの、絶対に嫌!
「アイさんって大人になりたくない人なのかな?」
「子どものままでいたい人なのかな?」
自分で自分を、そう思っていた。
でも、それは違った。そうじゃなかった。
今ならわかる。
わたしは「男性♂」になりたくなかったんだ。
性別なんて関係ない「天使」の自分でいたかったのに。
「男性♂」という「性」になることが、たまらなく嫌だったんだ。
【男子♂と体育なんて!】
そもそも体育はそんなに好きではなかったの。
なぜか走るのは速かったけど、もともと運動神経は良いほうじゃないし、ボールは怖くて苦手だったし。
中学生になって、体育の時間、女子♀と男子♂が別々になった。
わたしは当然、男子♂の方に入れられてた。
でもわたし、「男子♂の集団に入る」のが、なぜか嫌だったの。
ある日、ショックなできごとが起こったの。
体育で男子♂チームがマット運動してる所に、女子♀たちが通りかかった時のこと。
体育担当のマッチョ先生が言ったのよ。
「いいか女子♀よく見とけよ。こんな技もできない男♂と結婚したら、ろくな子どもが生まれないぞ!」
すごくショックだった……
自分が「男子♂の一人」として女子♀たちの見世物にされてる!!
「男子♂」として「女子♀」たちの視線に晒されてる!
何なの? この違和感と嫌(いや)感は……?
「どうしてアイさんはこっち(男子♂チーム)に入れられてるの?」
女子♀たちの視線に晒されることでハッキリと自覚させられてしまったの。
わたしが「男子♂の一人」だということが。
いたたまれない……
胸が痛い……
「どうして?……わからない……けど、とにかく嫌!」
「なんでアイさんがこっち♂なの?」
「アイさんが『女子♀』じゃなくて『男子♂』だから?」
ショックで、屈辱的で、すっごく変な感じで……
何が何だかわからなくて、頭が混乱しちゃった。
あの時のこと、今でも、忘れられない。
【赤い生理♀と白い生理♂】
毎年大晦日に放送される国民的歌番組。
「女子♀は赤」「男子♂は白」って分けられるけど、どちらでもない人だっているよね?
真ん中の人もいるし、不明の人もいるし、自分の性別に迷ってる人もいるのに。
第二次性徴って、痛い。
女の子♀も男の子♂も。
思うだけで胸がしめつけられる……
ムダ毛、喉仏、低い声、がっちりした肩……
男子♂のこういうの、全部、生理的に無理だし、痛いよ……
年頃になると、男子♂には「精通」というのが来るって知った。
女子♀の「赤い生理」に対して、男子♂には「白い生理」が来る。
「白い生理♂なんて、アイさんには来ないでほしい!」
そう、切に願ってた。
周りの男子達♂はオナニーで射精とかして「白い生理♂」を楽しんでた様子だったけどね。
幸いにもわたしには、中学校在学中は「白い生理♂」は訪れなかった。
【図書室の性教育】
男子♂の第二次性徴は生理的に無理だった。
一方、女子♀の第二次性徴がすごく気になっていた。
学校の図書室にあししげく通ってた。
見るのはいつも、同じ本の同じページ。
女の子♀の体の仕組みと第二次性徴。
第二次性徴で女の子♀の身体に起こる変化のこと。
赤ちゃんがどうやってできるか?とかね。
「こんなことばかり気になっちゃうのは、やっぱりアイさんが『思春期の男子♂』だから?
でもね、わたしいつも、その本を見るたびにね、何とも言えない切ない気持ちがこみ上げてきてたの……
「他の男子♂たちも、アイさんと同じように切なくなるのかしら?」
【女子♀の水着】
「女子♀」といってもお母さんのなんだけど、女の子水着を内緒で着てみたことがあったの。
いけないことをしてるみたいで、ドキドキしながら、こっそりと……
「もし女の子♀だったら、こんな感じなのかなぁ?」
でも、姿見鏡の中の自分は髪が短くて、普通に男子♂。
なんか、悲しかったなぁ……
【未来の赤ちゃんの名前は?】
コックリさんが「あっちは19歳で結婚するよ」って教えてくれた。
「じゃあ赤ちゃんの名前を考えなきゃ」って。
「そうだ、『ヒカル』がいい!」
『ヒカル』は、当時のわたしが読んでいた漫画の主人公の名前。「この名前なら男の子♂でも女の子♀でもどちらでもいけるでしょ?」
生まれてくる赤ちゃんの身体の性別と心の性別が、一致するとは限らない、でしょ? どっちの性でもOKな名前をつけてあげれば、その子が将来、名前で困ることはないもの。
当時のわたしはなぜか、そんなことを考えていたのよね。
【乙女の心】
うちのお兄ちゃんは音楽が好きだった。
ロック、ヘビメタ、ポップス、アイドル、洋楽……色んな歌を聴いていた。
その中で特にわたしの心をとらえたのは、昔(1980年代?)の女性アイドルの歌。
あなたのことが、内緒で大好き♥ なのに、うつむくだけで何も言えないわたし。いつか大きな声で、この思いを伝えたい……
ウフフ♪ 男の子ってホント世話が焼けるのね♥ ほら、すねてないでこっちにおいで! わたしがとっておきのキッスをしてあげるから。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。
そんな感じの歌詞にキュンキュンしまくりだった。
自分が歌の中の女の子になったような気がしたんだ。
「Promise me! 夢見たままで大人になっておくれよ。君だけは……」
【ガーン‼︎】
お風呂上がり、いつもみたいにリビングを裸でぶらぶら歩いてたの。
ソファに座って、ふと下を見たら……
うっすらと……生えてる……?
頭が真っ白になって……
胸が、苦しくなった……
気持ち悪い。
ハサミで切った。
でもまた生えてくる。
また切った。
でもまた生えてくる。
あきらめた。
いつかは来るってわかってはいたけど……ついに来てしまった……わたし、このまま「男性♂」になっていってしまうんだ……
もう一度、自分の心を殺した。
【壊れかけのRadio】
♪本当の幸せ教えてよ 壊れかけのRadio
(徳永英明「壊れかけのRadio」より)
【卒アル写真は隠れて】
自分の姿が嫌だった。写真を撮られるのも苦手。
ホルモン治療してる今でも、あまり得意ではないけどね♪
卒業アルバムの、上から撮影する全体写真ってあるでしょ?
あれ、わたしは写ってないの。
人の影にサッと隠れたから。
だって、こんなわたし、写りたくなかったんだもん。
【リーテ、ラトバリタ、ウルス……】
「リーテ、ラトバリタ、ウルス、アリアロス、バル、ネトなんとか……」
とある国のおまじないの言葉なんだとか。
思春期学園真っ只中のわたしには、nAo君という男子のお友だちがいたの。
彼には秘密のフルネームがあってね、
(nAo・i・シーゲル・ウル・ラピュ……なんとか)
三年間同じクラスで、同じ陸上部で、大の仲良しだった。
「リーテ、ラトバリタ、ウルス、アリアロス、バル、ネトなんとか……」
(我を助けよ、光よ甦れ)
暗黒の思春期の中にあって、彼の存在は文字通り、わたしの「光」だった。
nAo君と遊んだ楽しい時間が、当時のわたしをどれだけ助けてくれていたことだろう。
「さんしょくどーじゅんいーぺーこーどらなんとか……」
nAo君がつぶやく、不思議な呪文の数々。
【暗闇を塗り替えたミニ同窓会】
同窓会は苦手で、ずっと避けてきたわたしだったけど……
中学の三年間、ずっと同じクラスだった女の子三人組が、「集まろうよ!」って、新宿でミニミニ同窓会を開いてくれたの。
三年前の一月か二月だったかな?
ちょうどわたしの性同一性障害(現「性別不合」「性別違和」)の診断が下りて、ホルモン治療が始まる直前のことだった。
世の中的には、横浜に停泊していたダイヤモンドプリンセス号から国内に入ってきた新型コロナがどんどん国内にも広がって、日本中が未知のウィルスに戦々恐々としていた頃ね。
バスケ少女で委員長の「ちるちゃん」
人懐っこい手芸女子の「はみー」
お菓子作りが得意なソフトボール部の「りを」
そしてわたし、ウィッグを着けたあっち。
ランチ、おしゃべり、ティータイム、思い出話に花が咲いて、それからお買い物……
「女子♀だけ」の同窓会は最高に楽しくって!
同じクラスの頃は男子♂だったわたしが、今、大人になって、女子♀として女子♀のみんなと一緒に盛り上がってる……
なんか、不思議な気持ち……でも、心のどこかで、ずっと望んでいた気がする……こんな日が来ることを……
それがあの日、叶えられたんだ。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。
ハイスクールを卒業して都(みやこ)に来て以来、地元には近寄りたくなかったわたしだったけど……
そんな暗黒を、彼女たちがまばゆい光で塗り替えてくれたんだ。
ホルモン治療を間近に控えて、まだまだ精神的に不安定だった当時のわたしに、うれしくて、うれしくて、うれしすぎて、みんなからの最高のはなむけになったよ!
【My Best Friend】
今年(2023年)の1月のこと。
ずっと紙の年賀状でやり取りしてたnAo君が、わたしのブログ「トランスジェンダー虹色の履歴書」シリーズを読んで、封筒と便箋で、感想文&お手紙をくれたの。
その封筒の中にはなんと、当時わたしが描いた漫画のコピーが!
「これこれ! こんなの描いてた!」
懐かしすぎて、すんごい笑える♪
あの頃よく、テストとかプリントの裏に漫画や落書きを描いて、お手紙?にして、nAo君とやり取りして、遊んでたなぁ……
なんでもnAo君ったら、漫画や落書きだらけのわたしからの手紙を、今でも全部保存してあるんだって!
う、う、う、嬉しすぎて、涙が出たよ。
嬉しい……嬉しすぎる……卒業してもずっと、こんなにも思い続けてくれる友達がいるなんて……
nAo君によると、当時のわたしは一人称を「あーし」って呼んでいたらしい。うん、確かにそうだった!
(お手紙の中ではnAo君も「あーし」っていう一人称を使ってるね!)
紙のお手紙のあと、nAo君とラインで会話した。
鮮やかに蘇る、忘れていた記憶たち……
彼と一緒だから、光に塗り替えられていく、暗い過去たち……
nAo君、あなたこそ、My Best Friendだよ!
ちるちゃん、はみー、りを、そしてnAo君……
こんなにもSutekiであったかいお友達にめぐまれて、わたし、なんて幸せ者なんだろう。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。
ありがとう……本当にありがとう……
わたしの宝物だよ゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚
【あの頃の自分を、抱きしめよう】
きっと中学校の頃の友達も、先生も、お父さんもお母さんも、誰も知らなかっただろうなぁ、わたしのこんな心の中は……
そりゃそうよね?
だってわたし、誰にも言わなかったもん。
自分で言うのもなんだけど、ポーカーフェイスが上手だったし。
でもあっち、あの頃、辛かったよね?
ごめんね……
・・・・・・・・・
【今日の一言】
あの頃の自分を、抱きしめてあげていますか?
じゃあ、「高校編」で、また会おうね!
あっちでした♪
【つづき】
【歌】
うしろゆびさされ組「バナナの涙」
高井麻巳子「シンデレラたちへの伝言」
斉藤由貴「MAY」